
- 作者: 又吉直樹
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2013/08/26
- メディア: 単行本
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以前、又吉さんの「火花」を読書会で読んだ時、「プロの作家でもなかなかここまで丁寧に情景描写を描く人はいない」という指摘を、講師の先生がしていた。その時は、漠然と「なるほど、そういうものなのだなあ」と思っていて、そこで終わってしまっていました。

- アーティスト: 又吉直樹,堤真一
- 出版社/メーカー: YM3D
- 発売日: 2015/11/11
- メディア: CD
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そして、改めてこの本を読んでみると、又吉さんという作家さんが情景を物凄く丁寧かつしっかりと描く方だと言うことが、とても良く分かります。帯の、又吉直樹『火花』の原点、というのは決して誇大広告ではなく、いいえて妙ですね。
ただ、不思議な事に印象に残っているのは、又吉さんが会った人たちの話し―芸人仲間、アパートの変な住人達、過去や現代の作家さん達、そして元カノ…。多分、この本に写真がほとんどないのは、その場所を写真で撮ったり、その場に行ったりしても、すでにここに書かれている景色は、存在してないものだし、自分達の目ではなく又吉さん自身の目を通して見たモノなのだからだと思います。
読んでいると、じゃあ、自分の東京百景はどこなのだろう、かと考えずにはいられなくなりました。
『しばらくして、彼から「音楽をやりに東京に行く」と電話があった。彼は「東京の真ん中にある立川ってとこに住む」と言った。東京の真ん中に住むなんて凄いと思った。』
僕の大学時代のクラスメイトとほぼ全く同じ事をいうヤツがいるなと思って、読んでいる時に、山手線で吹き出しそうになってしまった。「ほぼ」と書いたのは、唯一違っていたのが、立川ではなくて八王子だった事。10代の青臭い自意識が、自分の住んでいる場所を何か世界で大切な意味のあるモノにするのでしょうか?