読書会のために、ジャネットウインターソンの「灯台守の話」を読み返すことに。普段あまり海外文学を読まない僕が、数少ない翻訳者買いしてしまう、岸本佐知子さんの訳の本です。
子供の頃に母親を亡くし、身寄りがなくなった女の子、シルバーが引き取ったのは、目の見えない灯台守の老人、ピュー。彼は、毎晩シルバーに物語を語って聞かせる。何故ならば、それは灯台守になるためには、必要な事だから。海の男達は、方位や緯度ではなく、「物語」でその灯台を探すのだから…。
元々の英文なのか、それとも翻訳者によるところなのか、それはよく分かりませんか、とても肌ざわりのいい小説だな、と思います。この小説の大きなテーマは「物語を語る」とは何か、という事。自分の苦しかった事や辛かった事を物語として語る事で、自分の体験を相対化して乗り越えたり、他人の物語を自分の中に取り込んでいく事で、自分という存在のちっぽけさや他者の大切さを知っていく。それは、まさに「人はなぜ本を読んだり書いたりするのか」という僕自信がずっと考え続けている事と、直接つながっていきます。
今回は「色」をキーに本を探す事になり、実は最初は全く違う本を用意していました。ただ、ふと以前行った舞台照明のワークショップを思い出し、「光」と「陰」→「白」と「黒」という連想から、「どうして、この本があったのを忘れてたんだ!」という事に気がつき、急遽、読み返すことに。
そのワークショップの時、
「白いものと黒いものを用意してくるように」
という事前の課題があった時に用意したのが、新潮文庫の夏の100冊の限定カバーの本。その時は、「白」は川端康成の「雪国」、「黒」は「江戸川乱歩傑作集」を持って行った記憶があります。
そうか~。こんな所で、康成と乱歩と、ウィンターソン。更には、作中に出てくる「ジキルとハイド」の著者、スティーヴンソンまでつながっていくのが、面白いですね。スティーヴンソンのお祖父さんは著名な灯台専門の土木技術者だったというのも、とても興味深かったですし。

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