5年くらい前に、自宅の風呂で水漏れが起こり、2ヶ月ほど使えず、銭湯通いの日々を過ごした事があります。丁度、舞台の稽古と重なってしまったので、かなりつらくなるだろう、と覚悟していたのですが、思いの外楽しい日々を過ごさせてもらいました。その間、いろいろな銭湯を転々として、それなりの数の銭湯に入りましたが、それぞれ個性があって面白かったし、北区の稲荷湯のように、映画「テルマエロマエ」で使われた、風情がありすぎる銭湯にも行く事ができ、ミーハー気分を満たす事が出来たりもしましたし……。

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風呂が直った後も、しばらくは、銭湯めぐりをしていたのですが、めんどくささが先に立ってしまい、いつの間にか、フェードアウトになってしまったのですが、僕にそんな、懐かしい日々を思い出させてくれたのが、塩谷歩波さんの「銭湯図解」。
著者の塩谷(えんやと読むそうです)さんによると、こちらに掲載されている銭湯の図解は、全て実際に測量して、それに基づいて縮尺して描いているとの事。無駄にゴージャスな銭湯や、中には、彫り師(刺青)がいる銭湯まであって、見ているだけでも、とても楽しい。そして楽しいだけでなく、そこに行ってみたくさせる力が、この本にはあります。確かに、下手な観光スポットに行った時の費用対効果と比較すると、銭湯の500円を切る料金設定というのは、かなりお得ですね。

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そんな「銭湯図解」の帯に推薦文を載せていた中の、一人が向井秋徳さん。そういえば、先日、その向井さんの短編小説集「厚岸のおかず」を読み終えたばかり。何たる偶然!あっ、けど、向井さんの推薦文があったのも、買うことになった一つの理由にはなってるから、そうでもないか。
沿線にあるラーメン屋の偏屈すぎる店主。何故かシャッフルされる大学のサークル、商店街のBGMの作者のあまりに意外すぎる正体、売れない演歌歌手とローリングストーンズのブライアン・ジョーンズとを結ぶ、不思議な「何か」……
最初は、ちょっと変なエッセーだなと、勝手に思い込んで読んでいたのですが、短編小説集だった事に勝手に驚き、いくら小説だからって、ここまでぶっ飛んだ事を大真面目に書いてしまえる事に、更に驚きました。ねちっこさでは負けますが、発想のデタラメさ加減は、リリー・フランキーさんの「ボロボロになった人へ」を読んだ時のインパクトに近いんじゃないか、って個人的には思いましたね。
この作品については、多分、自分の本業は小説家ではない、という肩の抜け方が、いい方に転んでいますが、この人が本気で長編小説を書くのを、見てみたいですね。まあ、凄い才能だとは思いますけど、この本も出てからしばらく経って次の作品が出る気配もないし、難しいんだろうなあ~。

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