昼から、下北沢さんのB&Bさんで、文学の教室。今回は、バルザック「山椒魚戦争」を3ヶ月で読む、2回目。この日は、作品の構造についてをメインに、先生の藤谷治がお話しをしてくれました。

- 作者:カレル チャペック
- 発売日: 2003/06/13
- メディア: 文庫
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メモを整理したもの。小さかったっすね。
最初は、個人や企業の問題に過ぎないものが、段々とその一人の人間の手を離れて、コントロール出来ない状況になり、破局へと向かっていってしまう。藤谷さんのお話しですと、そのために、①寓話性の強い個の物語→②断片的な新聞の切り抜きによる、さまざまな語り(ナラティブ)→③戦争への道をまっしぐらに進む同時代性を強く意識した物語、の三部構成を使ってその事をとても効果的に描いているそうです。なるほど、自分一人で読んでいるだけでは、絶対に気がつかない目線に気づくことができる。ありがたい事です。
個人的に好きなのは、世間では読みにくいといわれている2章。新聞の切り抜きにはなっているが、会話、演説、議事録、対談、インタビュー、論文等々、さまざまな種類の語りがパッチワークのように編み込まれていて、読んでいると、よくここまで人の事を観察し、それを小説の中に再現できるのだろう、凄すぎて、ただただ溜め息をついてしまいます。
どうやったら、ここまで人の事が見れるのだろうか?その疑問を藤谷さんにお聞きした所、帰ってきたのが「思いやり」という回答。確かに、文明や権力にはとことんまでシニカルだけど、個々の一人一人に対する眼差しは、とことん優しいし、この小説には真の意味での悪役はいません。(一方で、悪意がなくても戦争は起きるし、人類が滅亡の危機に瀕してしまう事があるから、この小説が怖いともいえるのですが)
そして、人に対する思いやりがあるから、世界と誠実に向き合おうとするし、他人に対する想像力が働くのだろうと思います。僕個人、どうしてもシニカル一辺倒のものの見方をしてしまう事が多いのですが、世界を少しでも広く見るために、バルザックや藤谷さんのように、もう少し思いやりのある目線で人を見れたらいいなあ、と思います。
終わった後、お店を見ていたら、入り口付近の平台で、池澤夏樹さんの書評集、「いつだって読むのは目の前の一冊なのだ」を見つける。昔、池澤さんと米原万里さんの書評が定期的に掲載されているサイトがあって、読む本を選ぶ時に、凄くお世話になった事を思い出す。確か、「賢者の本棚」というサイトだったか、コーナーだったかの気がする。今度調べよう。懐しくなって、買おうかどうしようか、数分間悩むが、読まないといけない本が結構あったのと、残金がやや心許なかったため、断念しました。

- 作者:夏樹, 池澤
- 発売日: 2019/12/20
- メディア: 単行本