だいたい読書日記

元本の問屋(取次)に勤務も1/末に退社。ただ今、絶賛求職活動中。好きなものは読書、インプロ(即興劇、舞台経験あり)。その他、立ち食いそば、B級グルメ、落語、ベイスターズ、FC東京、謎解きなどに興味があります。基本自分の備忘録なので、好きな事を好きなように書いています。

日記。oneor8「グレーのこと―2021ver.―」@ザ・スズナリ。

全体的には順調にいったのですが、一点だけ入荷が遅れた商品が発生し、やきもきする。調べてもらったら、製本所を出た時間がいつもよりかなり遅かったよう。おそらく何らかのトラブルがあったと思われます。遅くなるのは致し方ありませんが、出版社さんから何の連絡がないのは、いかがなものかと。贅沢は言いませんがご一報いただきたいものです。

まあそれでも、業量が多いわりにはそれほど遅くならない時間帯に追われたので、まあ、良しとしましょう。今日は、下北でoneor8さんの舞台を観る予定。時間には間に合いますが、全席自由席なので、出来る事なら早めの時間帯に行きたかったのですが、そこまでは贅沢は言えません。

定員の50バーセントに抑えているとはいえ、元々がキャパの割りには大きくない劇場なので、定員一杯入るとなかなかの混み具合になってしまいます。それでも劇団の力を考えたら、かなり抑えていますし、安全対策も入念に取っているので、舞台を観る分には大丈夫なレベルの混み具合です。


舞台には亡くなったらしい一人の女性。彼女の魂の次の輪廻先を決めるための会議に呼ばれたらしい。彼女は生前、とあるアパートに息子と二人で暮らしていて、アパートの住人も、そんな母子家庭の二人に何かと世話を焼いてくれた。彼女は、そのアパートを火をつけ、そこに住んでいる住民達を見殺しにしたらしいが……。

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人間はいかに上っ皮でしか物事を見ないのか。そんな嫌な部分をとても巧みに見せてくれます。設定こそはSFタッチですが、作・演は、人間ドラマを描く事にはとても長けている、田村孝裕さん。書類からでは見えてこない人間関係や感情が徐々に浮かび上がってきて、彼女に対するイメージが少しずつかつ重層的に変化していきます。人っていうのは、本当にひと筋縄ではいかないものです。

みなさんとても気合いの入っている演技をされていましたが、特に山野史人さんと阿知波悟美さんの両ベテランの対称的な演技が素晴らしかったです。主役の女性を演じる羽田美智子さんを中心に、おおらかで全てに鷹揚である事と、厳格で理路整然としている事との間で、正しさが揺れ動いていきます。ひと筋縄でいかないだけでなく、簡単に割りきる事もできない。

クライマックスはとても残酷ですが、その残酷ささえも乗り越えていくのだ、というメッセージは、こんな状況下ですと、とても身に染みます。良くできているだけでなく、観ていて凄く勇気の貰える作品でした。