午後からレクチャーに参加するために三軒茶屋の生活工房さんへ。少し早めに着いたので、ギャラリーの展示を見てみると事に。
展示されていたのは、大平農園という世田谷の農園についてのものです。東京に広い土地を持っていて羨ましいなあという、お気楽な感覚しか持っていなかった自分にとっては、都内の農家の方達が真剣に農業に取り組んでいる事が分かる、今回のような展示は、とてもいい勉強になりました。農薬に頼らないための土作りを展示を見ていると、人の身体作りに近いものを感じます。薬に頼りきらないためには、きちんとした身体作りが必要な点は、とても近似しています。
本日、生活工房にお邪魔したのは、ここで不定期に開催している、「哲学対話パラシフ」というものに参加するため。このレクチャーは前半と後半のパートに分かれていて、前半は講師の松本卓也先生のテーマに沿った講義。後半はそれを受けて、思ったことや考えたことを他の参加者の方達と語っていき、前半のテーマをより広く理解していきます。
今回は「死ぬこと/生きのびること」というテーマだそうです。知らない人と共通のテーマでリアルに対話する、という機会が大きく奪われてしまったコロナ下では、とても貴重な機会です。自分のように感じた方が多かったからかどうかは分かりませんが、定員の2倍以上の申し込みがあったそうです。そして、参加させてもらえる自分は、かなりの幸運の持ち主だそう。実感は全くありませんが(笑)
前半は、信田より子さんのアルコール依存症患者の治験や、上野千鶴子さんの「生き延びるための思想」の内容を中心に、松本先生からの講義。戦前や大学紛争影響で、簡単に「死」と直結してしまう、60年代以前の日本の思想。そのアンチテーゼとしての「生きのびる」ためのフェミニズム思想。男女間の機会の不均等という観点でしかフェミニズムを捉えることの出来なかった自分には、とても新鮮な考え方でした。
言われてみれば、確かにそうした一面はあります。食わず嫌いで上野千鶴子さんの研究を、すごく片寄った一面でしか見ていなかったのはとても勿体ないなあ、と思います。特にいかに「生きのびる」かについて今まで以上に深く考えていく必要のある、このコロナ下ではなおの事だと思います。(だから今回テーマに取り上げたのでしょうが)いつになるかは分かりませんが、上野さんの本は一度がっつり読んでみたいですね。

- 作者:上野 千鶴子
- 発売日: 2012/10/17
- メディア: 文庫
後半は、グループに分かれたり全体で、参加者の方達との対話の時間になります。今回、特に話題になったのが、当事者でない事の難しさと、「逃げる」事の大切さについて。前者については、自分もですが、特に東北の大震災の時に感じた方が多かったようです。