だいたい読書日記

元本の問屋(取次)に勤務も1/末に退社。ただ今、絶賛求職活動中。好きなものは読書、インプロ(即興劇、舞台経験あり)。その他、立ち食いそば、B級グルメ、落語、ベイスターズ、FC東京、謎解きなどに興味があります。基本自分の備忘録なので、好きな事を好きなように書いています。

日記。体調不良で休む。「鳩の撃退法」を読み終える。

起きてすぐはそれほどでもなかったのですが、しばらくすると全身のだるさがひどい上に、昨日予防接種した左腕に痺れがでてきました。横になっていると、ダルさがピークになり2、3時間ほど寝落ちして、またしばらくしてダルさが止まらなくなります。予防接種の副反応なのか、それとも過労なのかはわかりませんが、予防接種が終わったあと、必要以上にほっつき歩いてしまったのが一因である事は間違いありません。やっちまったなあ~。完全に気が緩んでました。

出歩くとしんどいので、予定に入れていた観劇は諦め、今日こそは1日家でおとなしくしている事にします。そんな事を3、4回ほど繰り返していると気がついたら夕方に。昼前からの記憶がほとんどないです。


まあ、昨日やんちゃしすぎてしまったのは反省するとして、それでもムダな時間ではなかった事は確か。少なくても、大変に楽しい思いはしましたし。病院で待っている時間と、リアル宝探しの帰りみちの時間とで、佐藤正午氏の「鳩の撃退法」を最後まで読み終えました。

親子3人の失踪事件と贋札事件。そして、そこから派生して次々と起こる非日常の出来ごと。そこに巻き込まれてしまったのが、元直木賞作家で今はデリヘル嬢の送迎ドライバーをしている津田。この津田が、くどくてしつこくて、平気で人を見下す、性格最低男。その癖優柔不断、なのに、変に女にモテます。小説の世界とはいえ本当にイラっとする、かなりタチの悪い人間です。そんな津田が目の当たりにした出来ごとと、身のまわりに起こったことを津田が小説にしたこと、その二つが巧みに絡み合い、何が真実で何が小説で描かれたフィクションなのか?その境界線が段々と曖昧になっていきます。途中で人称や語り手が替わったり、時間が過去にいったり現代に戻ったり。文章の力で、時間や空間や語り手を巧みに操っていく力量は流石です。映像や演劇などの他の表現と比較して、小説にはどんな特徴があって、どのような表現ができるのか?日頃からそれを深く考え、技術を磨いていかないと、決して書くことのできない小説だと思います。

確信犯でやっているとはいえ、表現は冗長ですし、主人公がかなりひどい人物なので、津田に共感できる人は少ないとか思いますし、作中の人物との共感を求めて小説を読むタイプの方は、決して読まない方がいいかと思います。ただ、逆に凄いのは、読者の共感を全く当てにせずに、作者の技術と創造力で、登場人物たちを動かし、次々と興味深い出来ごとが起り、先の展開が楽しみで仕方ない小説が描けてしまえる事。

津田を通して、作者にも自分の小説を読む力を試されているような気分になり、その事も尺にさわるのですが、悔しいけど面白いんですよねえ(笑)津田の横柄な態度も、それが原因でどつぼにはまっているのを見てると、「人の事バカにしてるけど、結局オマエが一番バカなんじゃん」って思えて、段々と可愛いとさえ思えてくるのが不思議です。それさえも、作者の術中かと思うと、「クソッ、またハマった!」って思います。