だいたい読書日記

元本の問屋(取次)に勤務も1/末に退社。ただ今、絶賛求職活動中。好きなものは読書、インプロ(即興劇、舞台経験あり)。その他、立ち食いそば、B級グルメ、落語、ベイスターズ、FC東京、謎解きなどに興味があります。基本自分の備忘録なので、好きな事を好きなように書いています。

だいたい読書日記14(時々映画やお芝居の話も)

仕事が落ち着いている割りには疲れているなあ、と思ったら、ここの所、あまりまっすぐ家に帰っていない事に気がつく。楽しいことは楽しいのですが、何かいい年をして、軸が定まらなくあちこちをフラフラしているなあ、という気もします。引きこもり気味だった去年と比べれば、アクティブになっただけでもいい傾向ではあるのですが。

珍しくそんな事を考えているのも、今までのように、全てお任せという会社との付合い方ではもう通用しなくなりつつあるのだなあ、という事をひしひしと感じているからかもしれません。段々と低賃金、時給労働者化して、それでも会社にしがみつくしかない、なかりの比率の再雇用者のみなさんを見ていると、最初の内は、正直「甘い汁ばかり吸いやがって、ざまあみろ」と思っていましたが(笑)、60過ぎても、嫌なことを嫌ともいえず、働かざるを得ない境遇というのは、本当にキツいだろうなあ、と思います。そして、どうやら明日はわが身らしい。これからは、自分で仕事を作る、という意識が必要なのでしょう。


とは言っても、こちらは「上の言うことに絶対服従しろ。そうすればお前らの会社での地位は保証してやる」といわれて育てられてきた、典型的な日本のサラリーマン。そこから、自分の考えを持って突き抜けていくためには、おそらく会社以外のロジックが必要になってくるのではないのでないかと。そんな風に考えている時に大変役に立ったのが、前田裕二さんの「メモの魔力」。メモの取り方だけでなく、取ったメモのアイディアを具体的に活用する方法や、メモを活用して、徹底的に自分自身と向かい合う方法などが書かれていて、この本をこのタイミングで読めて、本当に良かったです。

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)



因みに、手帳を読み返してみると、ここ2週間で3日も、下北沢の書店B&Bさんにいっていたらしいです。先々週の木曜日は久住昌之さんと塩谷歩波さんのトークショーへ。生塩谷さんが見たいという一心でいって、その目的は果たせたのですが、久住さんの本やコミックをもう少し読んでから行けば、もっと楽しめたのにという、若干の後悔も。特に、途中から、「のの湯」の作者の釣巻和さんもゲストで来られていただけに、かえすがえすも残念でした。

昼のセント酒

昼のセント酒


日曜日は、文学の教室。今回の課題図書は、漱石の「道草」。漱石の私生活がモデルになっているという事もありますが、大変に面白い。今まで読んだ、漱石の小説の中でも、一番面白いかもしれないです。

道草 (新潮文庫)

道草 (新潮文庫)


で、先週の火曜は、その文学の教室の先生をやられている、藤谷治さんの朗読会。本当に、急遽決まったらしいので、いろいろと大変だったようです。作家ご本人から、なぜ本にならないのかという話しを聞けた、とても貴重な機会でした。帰りに最新刊にサインをいただいて帰りました。

綾峰音楽堂殺人事件

綾峰音楽堂殺人事件

だいたい読書日記13(時々映画やお芝居の話も)

5年くらい前に、自宅の風呂で水漏れが起こり、2ヶ月ほど使えず、銭湯通いの日々を過ごした事があります。丁度、舞台の稽古と重なってしまったので、かなりつらくなるだろう、と覚悟していたのですが、思いの外楽しい日々を過ごさせてもらいました。その間、いろいろな銭湯を転々として、それなりの数の銭湯に入りましたが、それぞれ個性があって面白かったし、北区の稲荷湯のように、映画「テルマエロマエ」で使われた、風情がありすぎる銭湯にも行く事ができ、ミーハー気分を満たす事が出来たりもしましたし……。

テルマエ・ロマエ

テルマエ・ロマエ

風呂が直った後も、しばらくは、銭湯めぐりをしていたのですが、めんどくささが先に立ってしまい、いつの間にか、フェードアウトになってしまったのですが、僕にそんな、懐かしい日々を思い出させてくれたのが、塩谷歩波さんの「銭湯図解」。

著者の塩谷(えんやと読むそうです)さんによると、こちらに掲載されている銭湯の図解は、全て実際に測量して、それに基づいて縮尺して描いているとの事。無駄にゴージャスな銭湯や、中には、彫り師(刺青)がいる銭湯まであって、見ているだけでも、とても楽しい。そして楽しいだけでなく、そこに行ってみたくさせる力が、この本にはあります。確かに、下手な観光スポットに行った時の費用対効果と比較すると、銭湯の500円を切る料金設定というのは、かなりお得ですね。

銭湯図解

銭湯図解



そんな「銭湯図解」の帯に推薦文を載せていた中の、一人が向井秋徳さん。そういえば、先日、その向井さんの短編小説集「厚岸のおかず」を読み終えたばかり。何たる偶然!あっ、けど、向井さんの推薦文があったのも、買うことになった一つの理由にはなってるから、そうでもないか。


沿線にあるラーメン屋の偏屈すぎる店主。何故かシャッフルされる大学のサークル、商店街のBGMの作者のあまりに意外すぎる正体、売れない演歌歌手とローリングストーンズのブライアン・ジョーンズとを結ぶ、不思議な「何か」……


最初は、ちょっと変なエッセーだなと、勝手に思い込んで読んでいたのですが、短編小説集だった事に勝手に驚き、いくら小説だからって、ここまでぶっ飛んだ事を大真面目に書いてしまえる事に、更に驚きました。ねちっこさでは負けますが、発想のデタラメさ加減は、リリー・フランキーさんの「ボロボロになった人へ」を読んだ時のインパクトに近いんじゃないか、って個人的には思いましたね。

この作品については、多分、自分の本業は小説家ではない、という肩の抜け方が、いい方に転んでいますが、この人が本気で長編小説を書くのを、見てみたいですね。まあ、凄い才能だとは思いますけど、この本も出てからしばらく経って次の作品が出る気配もないし、難しいんだろうなあ~。

厚岸のおかず

厚岸のおかず

ボロボロになった人へ (幻冬舎文庫)

ボロボロになった人へ (幻冬舎文庫)

立ち食いそば21 北赤羽 「元長」

↑天ぷらそば 380円 + 大盛り 100円

東十条にある、そば清さんに行こうかと思っていたら、どうやら少し前に閉店してしまったとの事。立ち食いそば屋なので、ついつい「いつでも行ける」と軽く考えがちだったのですが、チャンスを逃すと次はやってこない事が多々あるという事。その事を改めて思い知らされます。

このまま手ぶらで帰る訳には行かないので、赤羽で埼京線に乗り換えて、北赤羽駅へ。出口を間違えたのは、ご愛嬌ですが、目的の店、「元長」に到着です。ちなみに出口は浮間口ですので、みなさまは、くれぐれもお間違えのなきことを。自分は目一杯遠回りをしました(汗)

外の販売機で食券を購入し、さて中へ。ここも、注文してからそばを茹でるので、少々時間は掛りますが、上野で、「元長」と名のつくお店=茹でたて=美味いけど、時間が掛かる、という事を既に学習済みの僕は、余裕を持って待つことが出来ます。ああ、経験って素晴らしい!

10分弱すると、出来上がってきたのですが、ここで驚く事に。かきあげそばの大盛りを頼んだのですが、手に取ると、ずっしりとした重みがします。普通のそば屋なら、完全に二人分以上のボリュームです。
食べてみると、のどごしの良さと、魚の香りのしっかりしている所は、上野のお店と似ています。一方で、つゆは甘めで濃厚で、全体的にはどっしりとしていてパワーがあります。こちらの方がガッツリと食べたい人向けだと思います。

この味、ボリュームで500円を切るのには、とにかくびっくりしましたし、お店の方も気さくだっですし、一度行ったら、また行きたくなる、そんな立ち食いそば屋さんです。

#立ち食いそば

だいたい読書日記12(時々映画やお芝居の話も)

読書会のために、ジャネットウインターソンの「灯台守の話」を読み返すことに。普段あまり海外文学を読まない僕が、数少ない翻訳者買いしてしまう、岸本佐知子さんの訳の本です。



子供の頃に母親を亡くし、身寄りがなくなった女の子、シルバーが引き取ったのは、目の見えない灯台守の老人、ピュー。彼は、毎晩シルバーに物語を語って聞かせる。何故ならば、それは灯台守になるためには、必要な事だから。海の男達は、方位や緯度ではなく、「物語」でその灯台を探すのだから…。



元々の英文なのか、それとも翻訳者によるところなのか、それはよく分かりませんか、とても肌ざわりのいい小説だな、と思います。この小説の大きなテーマは「物語を語る」とは何か、という事。自分の苦しかった事や辛かった事を物語として語る事で、自分の体験を相対化して乗り越えたり、他人の物語を自分の中に取り込んでいく事で、自分という存在のちっぽけさや他者の大切さを知っていく。それは、まさに「人はなぜ本を読んだり書いたりするのか」という僕自信がずっと考え続けている事と、直接つながっていきます。


今回は「色」をキーに本を探す事になり、実は最初は全く違う本を用意していました。ただ、ふと以前行った舞台照明のワークショップを思い出し、「光」と「陰」→「白」と「黒」という連想から、「どうして、この本があったのを忘れてたんだ!」という事に気がつき、急遽、読み返すことに。

そのワークショップの時、

「白いものと黒いものを用意してくるように」

という事前の課題があった時に用意したのが、新潮文庫の夏の100冊の限定カバーの本。その時は、「白」は川端康成の「雪国」、「黒」は「江戸川乱歩傑作集」を持って行った記憶があります。

そうか~。こんな所で、康成と乱歩と、ウィンターソン。更には、作中に出てくる「ジキルとハイド」の著者、スティーヴンソンまでつながっていくのが、面白いですね。スティーヴンソンのお祖父さんは著名な灯台専門の土木技術者だったというのも、とても興味深かったですし。


灯台守の話 (白水Uブックス175)

灯台守の話 (白水Uブックス175)


雪国 (新潮文庫)

雪国 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

ジキルとハイド (新潮文庫)

ジキルとハイド (新潮文庫)

立ち食いそば20 上野 「元長」

↑天ぷらそば 380円

GW中に行って、残念ながら期間中フルでお休みの所がかなりありましたが、そのうちの一軒が、今回お伺いした「元長」さん。なので、僕にとっては、一ヶ月間待ちに待った、再訪問です。

僕の前には、3人ほどのお客さんがすでに入っている模様。3人位だから、すぐに順番が来るだろうかと思ったら、3分経てども、5分経てども、くる気配ゼロ。
どうやら、夜は、天ぷらも含めて、作りおきしない方針のようです。おかげで、GW分も上乗せされて、かなりじりじりとした気持ちで待つ事になります。



それから2~3分後、漸く僕の前に天ぷらそばが。これで、もしまずかったら、絶対に文句を言ってやろうと、心の中は、若干戦闘モードです。



そして、最初のひと口。


「うっ、美味い!」


思わず、声に出てしまいました。あっさりと完敗です(笑)


かえしの醤油が一瞬だけ薄いかなと思うのですが、それも、取り越し苦労。あとから、口の中に広がる魚介類の素晴らしい旨みと香り。
おそらく、このバランスでないとこの味にはならないでしょう。そして、それが合わさったつゆと細めんの絶妙なバランスの素晴しさ。

つゆ1滴残さずにで食べ終わるまでに何回独り言とで、「美味い」を連発したか。いや~これは本当に美味しかったです。

だいたい読書日記11(時々映画やお芝居の話も)

孤独のグルメseason7を見ながら、ふと主人公の五郎さんのありがたいお言葉を書き写したくなり、自分の日記に転記していると、それだけでは物足りなくなり、過去の作品も写したくなってしまいました。とはいっても一気には無理なので、とりあえずは、コミックの2巻で我慢する事に。1巻と較べると、絵とセリフがしっくりと馴染んできているなあ、と感じる。のと同時に、気のせいかもしれませんが、五郎さんのセリフ回しがより、テレビドラマに近づいたような気が。サービス精神の旺盛な久住さんなら、それ位の事はやってもおかしくはないかも、という先入観が、そう見せているのかもしれませんが。

それにしても、改めて読み返すと、谷口ジローさんの描く絵の力には、ただただ驚くばかりです。一見すると、当たり前すぎて素通りしてしまうのですが、一コマ一コマ見ていくと、そのリアルさと、線のムダのなさには、何を見てどうやって描いたら、こんな境地までたどり着けるのだろうかと、その気の遠さと凄さに、ただただタメ息をつきたくなってしまいます。


谷口さんの作品といえば、漱石の「坊っちゃん」の誕生の経緯を虚実入り乱れて描いた「坊っちゃんの時代」なんかも、そこに描かれているのが明治である事が、何の違和感もなく受け入れて、読みすすめる事ができます。リアルであるっていう事は、細部の積み重ねで、その細部の綻びで、あっという間にウソになってしまう。そうすると、作品全体がウソ臭くなり、その世界に読者が入りにくくなってしまいます。谷口さんの描く世界は、押しつけがましい事なしに、そこに居させてくれる。これは、すごい事だと思います。

そんな事を書いていたら、年末に行った、久住昌之さんと竹中直人さんの対談で、谷口さんについて語っているのを思い出してきた。そうなると、もっといろいろと、谷口さんの作品が読みたくなってきます。読みたい本がたくさんあるという事は、本当に幸せな事です。

『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)

『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)


漱石と言えば、一ヶ月位前から「行人」を読んでいるのですが、冗長すぎる所と、恐ろしく面白い所とが、交互にやってきて、冗長な所がくるたびに、読書ペースが全く上がらなくなってしまい、苦戦しています。先日の、B&Bさんの読書会によると、文章が冗長になりがちな原因は、この時期に漱石が喀血して、生死をさまよった事で、所々に、文章の省略や抑制ができなくなってしまったという事にあるらしいです。なるほど。

行人 (新潮文庫)

行人 (新潮文庫)

立ち食いそば19 新宿 かめや

↑天玉そば 420円

イベントに行った後の20時半の新宿西口。やはり、美味しい店はどこも混んでいる。どこに行っても混んでいるなら、以前から気になっていた立ち食いそばのお店にと思い、思い出横町まで足を延ばします。

僕が行った時には、だいたい6~7人の行列。外国人の方には観光地になっているようで、しきりと写メを撮る方、ビデオカメラで横町全体の様子を撮影する方も。そして、かめやさんの行列にも、中国人のセレブと思われる、奥様がたのグループも。


それでも、やっぱり立ち食いそば。10分もすると、自分の順番が回ってきます。めんは茹でてある細めん、つゆはやや醤油の味が強めのオーソドックスな東京風。かきあげは白めの色が個性的。
カラッとした食感がつゆに浸されると、トロッとした感触になり、絶妙な美味しさ。半熟になった卵が、生卵のようにつゆの味を壊すことなく、めんとかきあげのいいアクセントになってくれています。


思い出横町というロケーションで食べれる体験が出きる、というだけでもお金を出す価値は充分にあるかと思います。
ただ、それだけではない、派手さはないけど、飽きのこないしっかりとした味を、どんなお客さんが来ようと24時間しっかり維持している事に、このお店の凄みを感じます。