だいたい読書日記

本の問屋(取次)に勤めています。仕事柄、本を読むのが好きなので、ここで独り言を書いております。趣味でインプロという台本のない即興劇をやっており、ステージ経験もそれなりにありますが、コロナの影響で今はお休み中。その他、立ち食いそば、B級グルメ、落語、野球など、好きな事を好きなように書いています。

日記。直木賞。

昨晩、選考が行われた、直木賞芥川賞。普段は仕事柄きちんと押さえておかなければという程度の感覚なのですが、今回の馳星周さんの7回目のエントリーで受賞という記事には、少し応援したいなという気持ちになりました。

お笑いのグランプリのように自分でエントリーする方式ではないとはいえ、大ヒットして映画化もされた「不夜城」以降も、賞や目先の売り上げに惑わされることなく、一定水準の作品を地道に出し続けたのは、本当に凄いことです。賞が全てではありませんが、こういう人が腐らずに頑張っているのを見ていると、自分もまだまだ出来ることがあるはずだという気持ちになり、エネルギーを少し貰えます。ノワールものがあまり得意ではないので、不夜城のシリーズ以降はご無沙汰してしまいましたが、馳さんの作品を久々に読んでみたくなりました。

不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)


直木賞で馳さん以上に候補になった方がいるのかなと思っていたら、上には上がいるんですね。白石一郎さん、阿部牧郎さんが8回目で受賞。古川薫さんにいたっては10回目で漸く受賞。そういえば、古川さんは受賞された時には、かなり話題になりましたね。出版業界の規模そのものも、あの頃と比較して今は5~6割程度ですから、話題になった時の反響は、今とは比較になりませんでした。

漂泊者のアリア (文春文庫)

漂泊者のアリア (文春文庫)

  • 作者:古川 薫
  • 発売日: 1993/05/10
  • メディア: 文庫

https://prizesworld.com/naoki/sp/jugun/nomi.htm

直木賞芥川賞のエントリー回数をネットで調べていたら、こんな↑便利なサイトを見つける。本当にありがたいです。これを見ていると、あの池波正太郎大先生が6回目の候補で漸く受賞しているのもわかります。少し調べ方を変えると、あの売れっ子の伊坂幸太郎さんが5回候補になってもいまだに受賞できない事もわかります。このお二人を5回ずつ落とし続けた選考委員ってある意味凄いですね。

この二人が落選し続けているのを見ていると、賞が全てではないとはいえ(我ながらくどい)、やっぱり芥川賞直木賞文藝春秋さんや大手出版社さんのビジネスの場だという一面があるのは否めないですね。作家さんが選考委員になると、プライドと自己承認欲求が人一倍高い人達の集まりですから、すでに売れている同業者には、よほどできた方でない限りは、どうしても評価は厳しめになるでしょう。出版社としては、賞を取っても取らなくてもコンスタントに売れる本よりは、受賞する事で大幅な増売が望める方がおいしいですからね。

今まであまり深くは考えたことがありませんでしたけど、文学賞で作家さんを選考委員にするのは、賞の権威や正当性を維持するためだけでなく、どうやらビジネス上の問題とも無縁ではないようです。だとすると、作家さんや出版社さん主導で決まった賞の本を売るよりは、自分達や読者の方たちが選んだ賞の本を売りたい、という書店さんが出てくるのは当然ですし、「本屋大賞」や「キノベス」等が生まれたのは必然の流れだったのではないかと思います。もちろん前提として、新人賞などで新人を発掘し、育てている出版社さんの努力があるのは言うまでもありませんが。

ただ一つ言えるのは、芥川賞直木賞が出版業界では相変わらず権威を持っていても、残念ながら、社会的には以前のような影響力を失ってしまっている事。それだけ出版業界が厳しくなっている、という事ですね。