だいたい読書日記

元本の問屋(取次)に勤務も1/末に退社。ただ今、絶賛求職活動中。好きなものは読書、インプロ(即興劇、舞台経験あり)。その他、立ち食いそば、B級グルメ、落語、ベイスターズ、FC東京、謎解きなどに興味があります。基本自分の備忘録なので、好きな事を好きなように書いています。

日記。本の運命(井上ひさしさん流本の読み方十箇条)。

「移動にはコストとリスクが掛かる。」

当たり前の事なのですが、つい忘れてしまうことが多かった事実です。交通機関の進歩の恩恵を享受している我々ですが、例えば江戸時代とかは、陸上は基本、馬か人力での移動ですから、移動のコストもリスクも今とは比較にならないくらい高かったはずです。昔の伊勢参りは、私たちが海外旅行に行く感覚と同じだったのではないでしょうか。生涯自分の村から出たことがないという人も、一定数いたのだろうと思いますし。

そこまで大袈裟ではないですけど、ある意味では江戸時代以上に深刻なのが、今回のコロナ。移動に関する事実を否が応でも目の前に突きつけてくれました。



とりとめのない事をここまで偉そうに書いてきましたが、要は、


「金がない」(笑)


そうコストとリスクの特にコストの方が。別に全くない訳ではないのですが、今週末ゲームマーケットがあるのに、先月末から今月頭にかけて調子をぶっこいてしまい、ちょっと使いすぎてしまいました。先週交換した、市のスーパー商品券もあるにはあるのですが、もちろんそれがゲームマーケットで使える訳ではないですし。これから月末に掛けて出掛ける事も増えるので、ここは体力もお金も温存です。


なのでという訳ではないのですが、昼過ぎまで寝て、昨日、市川市文学ミュージアムでスタンプを押した勢いで、井上ひさしさんの「本の運命」を一気に読みきる。


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市川文学ミュージアムのスタンプ。井上ひさしさんにゆかりのある文学館6館に設置されていて、集めて応募すると、プレゼントがもらえるらしいです。関東では、ここと先日行った世田谷文学館。そしてもう1ヶ所は由比が浜にある、鎌倉文学館です。


本の運命 (文春文庫)

本の運命 (文春文庫)


学生時代から時間にはルーズ。本屋の配達のアルバイトの時には、配達する前の本を読んでしまう。自分にとってどうでもいい事はびっくりする位あっさり放り出すのに、これはと思った事に対しては、絶対に引かず気のすむまでやらないと気がすまない。まあ人の事は言えませんが、近くにいたら確実にめんどくさいであろうお方です(笑)

それでもそんな欠点さえも、チャーミングに感じるのは、ユーモア精神にとても優れているのが大きいかと思います。ご本人は不本意かもしれませんが、とても2枚目とはいえないルックスも、みんなから愛される大きな武器になっているのでは。そもそも人の欠点やままならない部分から、葛藤や抜き差しならない関係が生まれたりするから、お芝居は面白いのです。なので、井上さんのような清濁併せ呑むような人だからこそ、人間の多様さが描けるのだと思います。
(なので、いろいろな忖度の結果だとは思ふのですが、市川のスタンプはちょっと、二枚目が過ぎるのではないかと思ふのですよ)


そして、そういった性格の根っこには、井上さんの何かを「所有する」という事への執着のなさがあったのではないかという気がします。苦労して集めた13万冊もの本にも、最後には地元に寄贈して図書館にしてしまいますし。それに、本を集める事に対しては容赦のないくらい徹底的かもしれませんが、本から学ぶという事に関しては、実に謙虚で柔軟ですし、私たちがそこから学べる事は、とても沢山あると思います。


世田谷文学館の展示でもかなり大きく取り上げられていましたが、本書の中に書かれている、そんな井上さん流の「本の読み方十箇条」。


その一、 オッと思ったら赤鉛筆
その二、 索引は自分で作る
その三、 本は手が記憶する
その四、 本はゆっくり読むと、速く読める
その五、 目次を睨むべし
その六、 大部な事典はバラバラにしよう
その七、 栞は一本とは限らない
その八、 個人全集をまとめ読み
その九、 ツンドクにも効用がある
その十、 戯曲は配役をして読む

その四あたりはほんとうに至言です。その六は人によって意見の分かれる所です。本にとっての幸せとは、その本がキレイに読まれる事だという意見もありますし、その本から出来る限り多くの事を学ぶ事だという意見もあります。たぶん、それは両方とも正解だと思いますし、本の種類や読まれる目的によっても変わってくるのではないでしょうか。


こういう、本と深く関わってくれた人生の先輩達がいて、その人達の本が読める。この本を読んでいると、その事にありがたさを感じずにはいられません。